つばめのハティハティ
ハティハティは、男の子のツバメ。春に日本にやってきて、女の子のツバメ、プティと出会い、子どもたちをそだてます。さまざまな危険にあっても子どもたちを守りぬく、やさしくて勇敢なツバメです。
『つばめのハティハティ』は、絵の箕輪義隆さんとずっとあたためていた企画でした。写真ではなく、絵と物語で、身近な鳥のくらしを絵本にしたいと考えていました。
1冊目はツバメで、と思ったのは、ツバメが減ってきているのではないかと感じたからです。ツバメは身近な鳥というイメージですし、「幸福な王子」など、ツバメが主人公の物語もたくさんあります。もしツバメがこのまま減っていってしまって、ツバメを見たことがないという子どもたちがふえてしまっては悲しいことです。ツバメのくらしを知って、興味を抱けば、ツバメをだいじにしてくれるのではないかと思いました。まだ、日本にはたくさんのツバメが渡ってきていて、家の近くで巣づくりしているところを見つけるのはむずかしくないのですから。
日本に渡ってくるツバメは、冬のあいだ、東南アジアでくらしています。なので、主人公の名前は、東南アジアの国の言葉から選ぼうと思いました。調べはじめてすぐにひかれたのが、インドネシア語の「ハティハティ」でした。「気をつけて」という意味ですが、「またね」と、つぎの日も元気にあいましょうと声をかけるような、やさしい言葉だったので、そこからハティハティの性格も決まっていった気がします。
箕輪さんは、野鳥画を得意とする野生生物画家で、鳥のすがたやくらしをリアルに描いてくれました。風切羽の数なども正確で、たくさん観察されているだけあって、表情も自然です。
線はガラスペンを使っているそうです。線の美しさ、やわらかさにも目を向けてみてください。
BOOK DATA
鳥のおはなし絵本 ①つばめのハティハティ
アリス館2013年4月40ページ
絵箕輪義隆
文かんちくたかこ
解説川上和人(森林総合研究所)
デザインタカハシデザイン室
企画・構成川嶋隆義、箕輪義隆
編集スタジオ・ポーキュパイン