海のぷかぷか ただよう海の生きもの
屋久島の水中写真家・高久至さんと、最初につくった絵本です。海をぷかぷかただよってくらす浮遊生物、「プランクトン」がテーマです。
プランクトンは、小さな生きものというイメージがあるかもしれませんが、泳ぐ力が弱いため、水の流れに逆らわずに、ただよってくらす生きものをさします。なので、魚やカニにもプランクトンとよばれる時期があるものもいるし、触手を入れると何メートルにもなるクラゲもプランクトンです。「ただよってくらす」というくらし方で分けられた呼び方です。
とにかく、写真が美しいのです。
高久さんから写真を見せてもらったとき、モモイロサルパの写真に圧倒されました。こんなふしぎな生きものがいるんだ! とおどろいたし、夜行列車のようだ、とイメージがふくらみました。
魚やクラゲ、イカやタコ、エビやカニ、と分類ごとに紹介していますが、そうして分けたことによって、ページで文章が途切れてしまわないよう気をつけました。「ぷかぷか」ただようすがたを、写真を見て感じたままに書くことで、ページをつなぐことを意識しています。
ブックデザインは、椎名麻美さんにお願いしました。
たくさん登場する生きものたちは、角版で並んでいますが、ところどころに配置された言葉が絶妙なカーブを描いていて、生きものを追う目線に浮遊感が生まれます。
サルパ電車に乗って、ぷかぷかたちのくらしを訪ねているような浮遊感をだいじにしながら、つくりました。きれいで、かわいらしくて、ふしぎな海の生きものたちの魅力をしっかり紹介した写真絵本になったと思います。
高久さんご自身は2メートル近くあるのではないか? というほどの見上げる長身ですが、機材を背負って、水面近くを浮遊生物よろしくただよいながら撮影しているそうです。やってくる生きものを、きっと、じーっと待っているのでしょうね。写真からは、生きものがだいすきで、たいせつにしたいと思う気持ちが感じとれます。
BOOK DATA
海のぷかぷか ただよう海の生きもの
アリス館2017年5月32ページ
写真高久 至
文寒竹孝子
協力土屋光太郎(東京海洋大学)、瀬能 宏(神奈川県立生命の星・地球博物館)、本村浩之(鹿児島大学)、武田正倫(国立科学博物館)、柏尾 翔(きしわだ自然資料館)、斎藤真美(水土舎)、峯水 亮(峯水写真事務所)
イラスト高久照美(niid design)
デザイン椎名麻美
プリンティング・ディレクション髙栁 昇(株式会社東京印書館)
企画・構成・編集川嶋隆義・寒竹孝子(スタジオ・ポーキュパイン)